1.ナノ粉末の合成・緻密焼結体の作成及び電解質特性評価 昨年度までに検討してきSm_2O_3-CeO_2系、Gd_2O_3-CeO_2系に引きつづき、Y_2O_3-CeO_2系、Yb_2O_3-CeO_2系、及びDy_2O_3-CeO_2系のナノ球状粒子を合成し、緻密焼結体を作成し、ナノ構造と導電特性の相関関係を系統的に考察する試みを行った。 いずれの組成においても、易焼結性の粉末を作成したことから、1050℃付近以上で、理論密度の95%以上の高密度焼結体を作成することができた。 高密度焼結体中の平均粒径を、焼結温度を変えることにより変化させたところ、100nm-300nm以下の粒径で、大きな導電率の向上が認められた。これらの焼結体について、導電率の酸素分圧依存性を検討したところ、1気圧から10^<-20>気圧までの広い酸素分圧において、導電率が一定であったことから、導電率の向上は、酸化物イオン伝導に由来するものであると考察した。以上のように、ナノ球状粉末を合成し、ナノサイズの粒径を有する高密度焼結体を作成することで、酸化物イオン伝導に由来する大きな導電率の向上を確認した。 2.格子像及び電子線回折図の詳細な検討 導電率向上の理由を考察するために、各系で、ドーパントの配合比を10-25atm%まで変化させて、導電率とナノ構造の関係を透過型電子顕微鏡により観察した結果、ナノサイズの粒径を有する焼結体中では、酸素欠陥の秩序化した領域(マイクロドメインとも呼ぶ)の大きさが小さく(1-2nm程度)なっていることが分かった。また、マイクロドメイン中にドーパントが偏析し、その結晶構造は、歪んだc型希土類構造又は、歪んだパイロクロア構造をとることも分かった。 以上の結果から、燃料電池用高性能固体電解質の作成には、ナノ球状粉末を活用し、焼結体中に発生するマイクロドメインサイズを最小化する必要があることが分かった。
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