研究概要 |
平成18年度は、これまで検討を行ってきたSm_xCe_<1-x>O_<2-x/2>、Gd_xCe_<1-x>O_<2-x/2>、Ho_xCe_<1-x>O_<2-x/2>及びTb_xCe_<1-x>O_<2-x/2>(x=0.05,0.1,0.15,0.2,0.25)の焼結体中に現れるナノ構造の違いが、焼結体物性に与える影響を最終的に整理することを目的に、各組成において炭酸塩共沈法により、平均粒径30-40nm程度の球状粒子の作製を行い、1400℃の常圧焼結により、高密度焼結体(相対密度95%以上)を作成したうえで、直流法により測定した導電率の組成依存性と、高分解能分析電子顕微鏡によるナノ構造観察を行った。 その結果、イオン伝導性を示すSm_xCe_<1-x>O_<2-x/2>及びGd_xCe_<1-x>O_<2-x/2>系の焼結体中では、これまで報告したように、マイクロドメインが発生し、その内部には2から3atm%程度、マイクロドメイン外部より高い濃度でドーパントが凝集するものの、Ce^<3+>が含まれる割合は極めて小さいという特徴をもつこと。一方、明確なn型半導性を示すHo_xCe_<1-x>O_<2-x/2>及びTb_xCe_<1-x>O_<2-x/2>系の焼結体中では、マイクロドメインではなく、わずか数nmの大きさの析出領域中に、8から9atm%程度の高濃度にドーパントが凝集し、そのうえ、多量のCe^<3+>が含まれており、こうした微小析出領域が、ホタル石構造の中に共存していることが明らかになった。 イオン伝導性を示すセリア焼結体中のマイクロドメインも、n型半導性を示すセリア焼結体中の析出領域も、その大きさは、たかだか数nmから十nm程度であるが、焼結体試料全体に分散しており(暗視野像により確認)、こうしたX線回折試験の検出限界以下に埋もれたナノ構造の詳細な解析が、セリア系固体電解質の物性を理解するうえで、極めて重要であることが、本研究によりはじめて明らかになった。
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