不快な生活環境や異常気象を引き起こす都市温暖化現象の緩和や夏季の冷房負荷を低減させる省エネルギーを実現するために、ひとつのシステムを提案した。そのシステムとは、人工的な水面を平面だけではなく、立体的にも造り出そうとするもので、建物の屋根や開口部である窓に酸化チタンをコーティングし、夏季に雨水を使って散水すると、酸化チタン表面の光誘起親水化現象により薄い水膜が形成する。その水膜から効率的に水が蒸発するときの蒸発潜熱により建物外表面や周辺大気を冷却し、省エネルギーをもたらそうとするものである。打ち水効果を水平面だけではなく、垂直面でも得ようとするシステムである。 このシステムは、経済産業省のフォーカス21のテーマのひとつであるNEDO革新的温暖化対策技術プログラムの一環の「光触媒利用高機能住宅部材プロジェクト」として採択され、建材メーカー7杜とコンソーシアムを設立し研究開発を行うことになり、このシステムを導入した一般的なプレハブ住宅を建設し、その効果を調べた。昨年の夏においては、散水すると、気温よりも2〜3℃平均的に室温が低下した。また、住宅全体で冷房負荷もおよそ550W低減できることがわかった。 さらに、このシステムの基礎的なデータである酸化チタン表面の光誘起親水化の現象と冷却効果の相関についても、親水性の指標である接触角と冷却効果について調べたところ、日射が室内に侵入するガラス建材の場合、高度に親水した接触角0°と、普通のガラスでは、同じ流量の散水をした場合でも、冷却効果におよそ50%の差がつくことがわかった。これにより、酸化チタン表面の光誘起親水化は、冷却効果を高めていることが確認できた。
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