研究概要 |
強磁性遷移金属の鉄とコバルト合金ドット配列を作製し、超高真空磁気カー効果測定装置を用いて磁気異方性や保磁力を測定した。試料を作製する基板として、銅(001)表面上に約7nm間隔で規則配列した窒素吸着ナノ周期構造を用いた。この上に鉄やコバルトを各々単独で蒸着すると各元素の磁性ドット配列を作製できる。そして、コバルトドット配列では、2原子厚さのドットが単原子厚膜を介してつながっている場合に強磁性が観測されたが、鉄ドット配列では2原子厚さ以上の鉄薄膜が形成されるまで強磁性が観測されない。そこで、単原子厚さのコバルトドット配列を最初に形成した後に鉄をその上に蒸着した合金ドットを作製し、その磁性を磁気カー効果によって調べた。この合金試料では、鉄の蒸着膜厚を増やすと、強磁性が観測された.磁化はコバルト同様面内にあり、磁気異方性は小さかった。また、転移温度は鉄の蒸着量を増すほど高くなるが、コバルトと鉄の合計の膜厚と同じコバルトドット配列と比べると低い。 コバルトドット配列の磁性と電子状態を調べるために、コバルトの軟X線光吸収分光と磁気円2色性測定を高輝度光科学研究センターにおいて行った。ビームライン25に研究室の試料作製装置を装着し、コバルトL_<III>,-L_<II>吸収端近傍の吸収を測定した。その結果、コバルトドットが小さくなるにつれて、コバルトの軌道磁気モーメントがスピン磁気モーメントと比べて相対的に大きくなることがわかった。これは、コバルトの金属結合によって小さくなっていた軌道磁気モーメントが、系が小さくなることによって回復した効果と考えられる。一方、この効果は基板が窒素に覆われているかどうかに大きく依存しなかった。そこで、成長したコバルトドットの構造を詳しく観測している。その結果、一部の窒素原子、コバルト表面の上にあることがわかった。
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