研究概要 |
<100>方向に1°微傾斜した銅(001)面上に平均0.3原子層の窒素を吸着させ、アニールすると一辺5nm程度の正方形の窒素吸着パッチが、清浄表面を介して<010>方向に延びたステップエッジに平行に1次元的に配列する。この表面上にコバルトを蒸着した系の構造をSTMで観測し、その強磁性を超高真空中で磁気カー効果によって調べた。この系では、平均膜厚が1.5-2.0原子層程度のとき、2,3原子層高さのコバルト微粒子が一次元的に配列する。その磁気ヒステリシス曲線を観察すると、平坦な表面上に2次元的に配列したコバルトドット配列と比べて磁気異方性が強く、磁化容易軸がステップに平行となることが明らかとなった。 コバルトドット配列の微視的構造と磁性を調べるために、軟X線吸収分光と軟X線磁気2色性分光測定を行った。界面ではコバルトと窒素の結合があること、および、コバルトドットの軌道磁気モーメントはドットが小さくなると大きくなることがわかった 窒素吸着面でのコバルト微粒子成長には、窒素パッチ生成によってできた銅清浄表面格子歪みが大きな影響を与えていると考えられる。そこで、格子歪による表面電子状態変化を光電子分光によって測定し、第一原理計算と比較した。精密測定が可能であるM点のタム状態では、格子歪みによる電子状態変化が観測され、計算結果と定量的に一致した。さらに、この表面上に蒸着されたコバルト微粒子の成長について、STMとXPSを用いて調べた。その結果、窒素吸着面上の微粒子の大きさが4nm2以上となると、コバルト微粒子表面に窒素が析出することがわかつた。 また、大阪大学工学研究科笠井研究室と共同で、銅表面上の強磁性鉄ナノ構造の電気伝導よび電子状態について理論的解析を行い、今後の実験研究を推進する上での指針や、デバイスへ応用の可能性を議論した。
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