本年度は、研究代表者が見いだしたCu_<60>(Zr or Hf)_<30>Ti_<10>金属ガラスの急冷ナノ組織の系統的な解析を行なった。これまで高分解能透過電子顕微鏡観察等によって確認されていた数nm程度のナノ結晶組を小角散乱X線回折によって解析した。その結果、透過電子顕微鏡観察組織と同程度の大きさの密度分布が存在することを確認した。これらの密度分布は、大角度暗視野観察(HAADF)やナノビームエネルギー分散X線分光分析法によって明らかとなっているナノ結晶とガラス相の組成差によるものと考えることができる。透過電子顕微鏡観察法は試料調整が必要であり、また局所的な組織観察であることからナノ組織の均一生成の証明には必ずしも適していなかった。しかし本年度行なった小角散乱X線回折法はいわゆる非破壊による解析であり、かつ広い領域の平均情報であるため、ナノ結晶組織が急冷合金中に均一微細に存在することを明確に示した結果であると考えられる。現在作製条件、特に冷却速度の影響によるナノ結晶組織の生成過程の変化を調査すべく、研究遂行中である。次年度はこれらの影響を明らかにし、ナノ組織の自己形成機構の解明を目指す予定である。 また、本年度はナノ準結晶が急冷段階で非晶質相中に自己形成するZr_<80>Pt_<20>合金の変形破壊挙動についても高分解能透過電子顕微鏡を用いた微細組織観察をもとに解析した。この結果、ナノ準結晶粒子間に存在する非晶質相に変形が集中し、ナノ準結晶粒子がその変形を阻害しているというこれまでの論を証明する観察結果を得た。
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