Cu_<60>(Zr or Hf)_<30>Ti_<10>金属ガラスの急冷ナノ組織の系統的な解析を行なった結果、高分解能透過電子顕微鏡観察、大角度暗視野観察(HAADF)やナノビームエネルギー分散X線分光分析法および小角散乱X線回折法によって急冷状態で数nm程度のナノ結晶組織の生成を確認した。このようなナノ組織の生成要因の考察、その結晶化過程ならびに機械的特性の調査を行った結果、Cu_<60>(Zr or Hf)_<30>Ti_<10>金属ガラスでは、ともに急冷状態で生成するナノ組織はマトリックスのガラス相よりもCuが多く含まれた立方晶の非平衡相であることがわかった。このことから、過剰に含まれているCuがナノ非平衡相の析出に寄与していることが考察されるとともに、液体状態でこのようなCu-richな強固なクラスターの生成が推測された。Cu_<60>Zr_<30>Ti_<10>金属ガラスの相変態過程においては、初晶結晶化過程ではナノ結晶が維持されたままマトリックスのガラス相から非平衡ナノCuZr相が析出することがわかった。このような2相のナノ非平衡相を持った組織では優れた機械的性質を示し、圧縮破断強度は急冷状態よりも増大することを明らかにした。一方、Cu_<60>Hf_<30>Ti_<10>金属ガラスでは結晶化初期過程においてナノ組織とガラス相がともに消失し、Cu_8Hf_3相が生成することがわかった。 以上のような検討結果からナノ組織が自己形成する複合金属ガラスでは、非化学量論的組成をもった非平衡クラスターの形成が大きな形成要因となっていると考察されるとともに、このような複合金属ガラスでは、ガラス単相には見られないユニークな相変態と機械的性質を発現することを明らかにした。 また、二十面体局所構造が安定に存在するZr_<65>Al_<7.5>Cu_<27.5>金属ガラスから結晶化のごく初期過程においてナノ準結晶が生成することも見出した。このことはガラス単相においても特異局所構造を用いたナノ組織形成が可能であることを示す結果と考えられる。
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