近年、ナノ構造TiO_2に有機色素を分光増感剤として適用した、色素増感太陽電池の研究が活発に行われている。一方、有機色素に比べて、新奇な特色を持つ半導体量子ドットを増感剤として適用する研究が、ここ数年継続的に行われている。また、不純物発光に関して、半導体ナノ粒子系を母体とした場合に、蛍光量子効率が大きく増大することが報告されている。本研究は、今世紀の重要課題の一つである光エネルギーの有効利用の基盤に関するものである。研究対象として、(1)高いエネルギー変換効率を実現する分光増感太陽電池を念頭に置いたナノ構造TiO_2光電極の形成、ならびに従来の有機色素に代って多くの長所を有する化合物半導体量子ドット吸着による分光増感機能の検討、(2)高効率蛍光材料を念頭に置いたMnを不純物として含むZnSナノ粒子系の作製と評価、の2項目を取り上げた。各項目について研究成果を列記する。 (1)ナノ構造TiO_2光電極の形成には、(1)粒径の異なるナノ粒子複合系、(2)結晶構造の異なるナノ粒子複合系、(3)ナノチューブ・ナノワイヤ複合系、(4)逆オパール構造電極系を対象とした。これらの系にCdSe量子ドットを増感剤として適用した。その結果、各電極系におけるCdSe量子ドットの吸着・結晶成長には著しい差異が見られた。またCdSe量子ドットからの電子移動にも吸着・結晶成長に対応する差異が見られた。さらに、(3)ナノチューブ・ナノワイヤ複合系と(4)逆オパール構造電極系では、CdSe量子ドットの粒径の増加に伴い、それらの電子移動が他の2つの系とは異なり、急激に遅延化することが判明した。 (2)紫外線照射により、従来のバルク蛍光体とは異なり蛍光強度が増加し、さらにアクリル酸で保護することによりさらなる蛍光強度増加が見られた。これらの蛍光強度増加に対応して、蛍光の過渡応答時間は減少することが見出された。
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