本研究では、複数の分子の存在により機能発現ターゲット分子の特異的な認識が可能な人工レセプターについて検討する。本研究を行うためには、ターゲット分子に対する認識場を構築後、一度その機能を破壊(もしくは、低下)させ、さらに再構築が可能なシステムの構築が必要となる。レセプターの合成法として、テーラーメイド的に認識場を構築できるモレキュラーインプリンティング法を用い、シンコニジンをターゲット分子としたインプリントポリマーの開発を行った。 15年度までに、金属ポルフィリンを用いて合成したシンコニジンインプリントポリマーから金属ポルフィリンを切り出した金属ポルフィリン欠損インプリントポリマーは、テトラピリジルポルフィリン亜鉛(II)錯体を再吸着した。これは、加水分解によってできた四つのカルボキシル基とテトラピリジルポルフィリン亜鉛(II)錯体が水素結合し、シンコニジン認識場を再構築していることが示唆された。 16年度は、このポリマーにテトラピリジルポルフィリン亜鉛(II)錯体を結合させた場合、切り出す前と同様のジアステレオ選択的な認識場が再構築されているかどうか検討した。 【実験】 認識場の再構築とジアステレオマーの再結合実験 ポルフィリンの切り出したポリマーをテトラピリジルポルフィリン亜鉛(II)錯体溶液中で撹拌して、ポリマーに結合させた。シンコニジンおよびそのジアステレオマーであるシンコニンのベンゼン溶液中でそれぞれ3時間撹拌した。上清の吸光度変化からポリマーに対するそれぞれの吸着量を算出した。 【結果】 シンコニジンは、シンコニンに比べ1.7倍多く吸着した。再構築した結合部位が、ジアステレオマーを認識可能なほどに高い精度をもって再構築されたことを示している。この結果から、単に水素結合と軸配位によりCDが吸着されているというだけでなく、その3次元的な配置までもが規定された認識場の再構築が達成されたと思われる。
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