近年、有機化学的手法で合成される直径5ナノメートル程度の半導体のナノ結晶(コロイダルナノドット)が注目されている。このドットは表面が有機分子で覆われていて発光の量子効率が高いため様々な応用が期待されている。特に、その表面修飾分子層が光学物性に影響しているという報告もあり、半導体ナノ結晶と有機分子層との界面の性質は興味深い。本研究では、導電性探針を用いた原子間力顕微鏡(AFM)により単一のコロイダルナノドットの電流・電圧特性を測定し、同ドットの界面エネルギー準位と表面修飾分子の関係を明らかにすることを目的としている。具体的には、導電性基板上に単一のドットが分散した試料を作製し、任意の1個のドットに導電性AFM探針を接触させながら電圧を印加してドットを介して流れるトンネル電流を測定し、共鳴トンネル効果からドット内部や界面のエネルギー準位を明らかにする。 しかし、従来から、導電性基板上に分散させた単一ドットに金属コートした導電性AFM探針を接触させるとき、探針・試料間の吸着力が大きいためにドットの位置が変化してしまい、必ずしもドットを介したトンネル電流が測定できない難点があった。この問題を解決することを目的として、AFM探針と試料表面の吸着力を低減してドットが動かないようにするための種々の方法を検討した。 その結果、疎水性の導電性探針を利用することにより、吸着力を1/30程度に低減し、ドットが移動しない状態でその電流・電圧(I-V)特性を測定することに成功した。得られたI-V特性には、共鳴トンネル効果によると思われる顕著なコンダクタンスの変化が見られており、今後さらに測定条件やドットの種類を変えて検討を進める。
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