直径数ナノメートルの半導体微結晶表面に有機分子が配位したコロイダルナノドットは、表面が有機分子により不活性化されているため発光の量子効率が高い。そのため、様々なデバイスへの応用が期待されているが、その光学物性には有機分子層と半導体の界面の状態が大きく影響しているという報告もあり、興味が持たれている。本研究では、導電性探針を用いた原子間力顕微鏡(AFM)により、コロイダルナノドットの電流・電圧(I-V)特性を測定して、その界面エネルギー準位と表面修飾分子の関係を明らかにすることを目的としている。そのため、導電性基板にCdSeコロイダルナノドットが分散した試料を作製し、コンタクトモードのAFMでその像を測定したのちに、同ドットに導電性探針を接触させてI-V特性を測定するための技術を開発してきた。 しかし、導電性基板上に分散させたドットに金属コートしたSi探針を接触させるときに、基板・探針間の吸着力が大きいためにドットが動いてしまうためにドットを介するトンネル電流が測定できないという難点が明らかになった。また、単一ドットの高さ測定においても、見かけ上の高さが1-2nm程度と、光吸収測定から推定される直径の5nm程度より小さくなることも同じ原因によるものと推定される。 そこで、ドットを基板上に固定するために厚さ2nm程度のSiO_2薄膜を形成した試料を金属コート探針で測定した場合と、吸着力を低減するためにカーボンナノチューブ(CNT)探針を使用した場合のドット高さ測定結果を比較するした。前者ではドット高さの分布が3-6nmと、光学測定と一致する結果が得られた。後者ではドット高さ分布は2-7nmと広がったが大幅に改善され、有効性が確認された。そこで、CNT探針を用いてI-V測定を行ったところ、共鳴トンネル効果によると考えられるコンダクタンス変化が見られた。また、ドットを2次元的に配列させて動きにくくすることによって、金属コートSi探針でも同様の測定をするための技術開発も行った。
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