CdSeコロイダルナノドットに可視域の光を照射すると、その光の量に応じて蛍光強度が増大する現象(光メモリ効果)が見出されており、われわれは高密度メモリ素子への応用可能性を検討している。この効果はドットの表面修飾分子に依存しているので、界面エネルギー準位が関与していると推定されるが、非発光である界面準位についてはほとんど研究されていない。これを解明するためには電気的な手法を用いた研究が不可欠である。本研究では、原子間力顕微鏡(AFM)の導電性探針を用いてコロイダルナノドットの電流・電圧(I-V)特性を測定し、トンネル分光によってその量子準位や界面準位を測定することを目的とした。そのため、導電性基板の表面にドットが点在する試料を作製し、そのドットの存在をコンタクトモードAFMで確認したが、その高さは、光吸収スペクトル測定から推定されたドットの直径より明らかに小さかった。 これは、探針が基板表面から離れにくいためにドットの真上を走査できず、ドットを押して横方向に少し動かしてしまうので、ドット高さがその直径より小さく測定されると考えられる。この問題を解決するために、導電性カーボンナノチューブ(CNT)探針の使用を検討した。実際、CNT探針では、探針・試料間の吸着力が約30分の1に低減され、ドット高さの測定精度は大幅に改善された。また、ドットのI-V特性にも、顕著なコンダクタンス変化が見られ、コロイダルナノドットを介した共鳴トンネル効果が示唆された。 さらに、ドットが基板上で動きにくく安定に存在できるように、水平付着法により、ドットの2次元島構造を作製することを試みた。種々の条件でその作製を検討した結果、数百ナノメートルの大きさの単粒子高さの構造を作製できたことをAFMで確認した。今後は、そのI-V特性測定を行う。
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