好塩菌から紫膜として精製した感光性イオンポンプ蛋白質のバクテリオロドプシンの水分散物を、電極である透明導電基板上に配向固定化し、これを光センシング電極とする人工網膜素子を作製する研究を実施した。プロトンポンプによる電極表面pH変化が引き起こす時間微分型の光応答電流の強度を高めるためにこれまでLangmuir-Blodgett法による均一累積膜法、スピンコーターによる多層コーティング法を試み、昨年度は水面Langmuir膜に電場と超音波振動とを同時に与える処理によって、膜のパッキングと配向を制御する成膜方法を構築した。さらに光電変換素子の作製においては、電解液に水性ゲルを使ってセルを擬固体化する方法を検討し、粘性のアルギン酸Naの水性ゲルを用いることで高い光電応答を与える現象を見出すことができた。これらの成膜方法とセル組み立て方法に基づいて、本年度は人工網膜型イメージセンサとしての機能を検証するために、画素を配列したアレイ電極をパターニング法によって作製し、その電気信号取り出しの方法を工夫することによって、光情報を多様に演算処理ができる素子の作製を試みた。1×1mmを画素とする光素子(ITO電極、金対極、KCl電解質)の出力を、抵抗とコンデンサからなる単純なCurrent amplifierとCharge amplifierに入力し、前者で動きを示す微分応答を、後者で静止画を示す定常応答を検出する演算処理を行なった。この2つの処理を同時に行なうことによって、動画と静止画を区別して認識できる人工網膜素子を設計できることを示した。本センシングの結果はMEMSの国際学会で論文として報告した。
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