ナノ電気機械効果を利用し、新たな特性を持つ単電子トランジスタの開発に向け理論的な研究を行っている。これまでに行った研究は以下の通りである。 マイクロスケールの長さを持つ厚さ10ナノメートル程度の、半導体物質を用いた両持ち梁構造を措定し、その中央部に量子ドットを形成した単電子トランジスタを考える。両持ち梁構造はソースとドレイン電極として働き、それらを支持している基盤はゲート電極として働く。ゲート電極と量子ドットおよびソース・ドレイン間に電圧を印加すると、引力が働き電気的な性質が変化する。これまでの研究では、この電気的特性の変化の電子伝導への変化を明らかにした。その結果、印加電圧により両持ち梁構造が力学的に不安定になるに従い、構造が量子ドット上の電子数の変化に敏感に反応し変形する。この変形が電子のトンネル透過に対して新たなブロッケード機構として働くことを見いだした。この結果を論文として発表した。この解析では、両持ち梁のエネルギー散逸を大きいと仮定しているが、その仮定に関する評価を現在行っている。また、電子数の変化に対する両持ち梁の動力学的な応答についてもこれまでに調べてきており、現在論文を執筆中である。
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