厚さ0.17mmのカバーガラスをシランカップリング試薬でアミノ化した。表面に直径400-600nmのポリスチレンラテックスを分散した上から金を50-100nmの厚さで蒸着した後、カバーガラスをエタノール中で超音波照射することによりラテックス球を除去するプロジェクション法によって内径400-600nmの金ナノウェルを作製した。このナノウェルをもつカバーガラスをマッチングオイルで直角プリズムに貼り付け、55°の入射角で単色光を用いて全反射減衰照明し、ナノウェルを透過する散乱光強度の波長依存性を観測した。散乱スペクトルには表面プラズモンの散乱によると考えられるピークが観測され、ピーク波長はナノウェルの口径と対応していた。すなわち、ナノウェルをもつ金薄膜は、その口径と対応した波長をもつ表面プラズモンを効率よく散乱することがわかった。そこで、ナノウェル内部に局在するファーフィールド光による蛍光免疫分析と遺伝子分析に挑戦した。 倒立顕微鏡を用いて20個のウェルからの蛍光信号を観測できるようにセットし、15merのオリゴヌクレオチドを底面に修飾し、テキサスレッドで標識した相補性をもつオリゴと対照である相補性をもたないオリゴのバッファ溶液をそれぞれナノウェル上に滴下したところ、相補性のあるオリゴの場合には数十秒間で蛍光強度が上昇し、そのまま維持されたのに対して、対照系では蛍光強度の増大はみられなかった。免疫分析については、底面に抗ヒトIgGを標識し、テキサスレッドで標識したヒトIgGおよび対照系のBSAのバッファ溶液を滴下したところ、IgGの場合は数十秒間で蛍光強度が上昇し、そのまま維持されたのに対し、BSAでは一旦蛍光強度は増大したものの、十数秒間で急速に減衰し、以後は蛍光が観測されなかった。 以上のように、ナノウェル中における蛍光遺伝子分析と免疫分析の実証に成功した。
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