研究概要 |
本研究の目的は,フロー需要対応型施設配置モデルを構築してそのモデルによる施設立地の特徴を把握すること,および高速交通網の形状が都市施設の立地やその集積としての都市空間構造に与える影響を分析することにある.フローを需要とした立地モデルには,大別して次の2種類があると考えられる.第一のモデルは,施設の立地によって捕捉することのできるフローの量を最大にするように施設を配置するものである.これは,既存の立地モデルと対応させるならば,被覆(covering)型に属するモデルである.第二のモデルは,迂回距離を最小化するように施設を配置するモデルである.これはp-medianモデルと同様,総距離最小(minisum)型に属するモデルである.本年度は,後者の迂回距離を最小化するように施設を配置するモデルを取り上げ,交通流動としてフロー需要が与えられた場合に,どのような施設配置がもたらされるかについて分析を行った.また,高速交通網として放射環状型交通網を取り上げ,その存在が移動距離や流動量に与える影響の基本的性質を解析的に明らかにした. 流動を中継する拠点施設の配置を,利用者の移動距離を最小にするとともに,与えられた発生集中量から都市内の流動を同時に最小化するように決定する問題であると考え,職住割当問題とフロー需要施設配置問題を合成したフロー需要対応型施設配置モデルを定式化し,拠点施設の容量制約がその立地に及ぼす影響を明らかにした.その結果,まず第一に,流動を最小化すると同時に利用者の移動距離を最小化する拠点配置問題の解は,都市内流動量の分布に対応して都心部の施設ほど利用者が多くなることが明らかになった.第二に,このモデルを通勤流動に適用し,鉄道結節点等のターミナル立地が決定される仕組みを擬態化し,その数と流動の迂回率・過剰率との関係を東京都市圏を例に算出した結果,拠点(ターミナル)施設の配置と,迂回率や過剰率との定量的関係を分析することが可能になった.そして第三に,拠点施設の容量制約を考慮するときには,無制約の場合より都心側に集中した配置が望ましいことを示した.また,放射状交通網に環状路を1本加えるだけで平均距離は大きく減少し,複数環状路の最適配置が都心と縁辺の中央よりやや外側で密になり,都心と縁辺の中間的な地域で環状路の需要が大きいという潜在的な性質も導かれた.
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