研究概要 |
本年度は,エージェントベースモデリングの政策への応用への第一段階として,エージェントベースモデリング用言語SOARS(Spot Oriented Action Role Simulator)を開発した.SOARSは社会的なネットワークにおいて,エージェントの役割行為を適切に表現することを目的とする3階層のモデリングフレームワークで,静的構造として「スポット」「レゾルバ」「情報オブジェクト」「物理オブジェクト」があり,動的な制御構造として「ステップ」「ステージ」「フェーズ」「ターン」がある.また,エージェントの役割行動を記述するためにスクリプト言語が用意されている. SOARSの概要については2004年3月4日に東京工業大学で行われた継続自動制御学会・システム情報部門・第32回システム工学部会研究会で発表され,概要のチュートリアルも行われた(出口弘(東工大),田沼英樹(フリーランス),清水哲男(東大医科学研究所),SOARS : Spot Oriented Agent Role Simulatorの設計と応用).SOARSはAPACHEライセンスによる配布を開始する一方,特許申請の準備を進めている. 現在は,研究の第二段階として,SOARSを用いたSARS(重症急性呼吸器症候群)の病院内および病院を含む地域内での感染拡大/隔離政策の評価モデルを構築中である.また,Axtell(ブルッキング研究所)が作成した炭疽菌によるバイオテロの感染拡大モデルの感染症に関する諸仮定をSARSに変更して隔離政策の有効性を調べたモデルは今年度構築しており(大西康徳,小山友介,出口弘,予防接種では対応できない突発的な伝染病に関する研究,2004年3月4日のシステム工学部会で発表済),その結果と比較することでいわゆるセル型のシミュレーションによる表現力の限界を提示するとともに,SOARSによるモデル化の利点と有効性を確認する予定である.
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