研究概要 |
本研究では,ソフトウェア開発プロセスの品質が最終的にプロダクトの品質を左右するという認識から,開発技法・ツール,開発技術者,開発組織,プラットフォームなどのプロセス構成要素の属性を考慮して,これらの総合属性に対する品質すなわちプロセス品質を改善するためのプロセス診断方式と,これに対する品質/信頼性評価技術について議論した.ここで,プロセス構成要素の属性としては,開発技法・ツールの使用頻度,開発技術者の能力・経験,開発組織の技術力,プラットフォームの安定性等が考えられ,これらを改善することによりプロセス品質は向上することになる.本研究では,開発プロセスの人的要因が特に影響している寄与度が高いものと考えて,下記の3点に焦点を絞り研究を進めた. (1)プロセスを構成する開発技術者の特性を人的要因として,プロセスの結果である設計仕様書やソースコードなどの中間生産物および最終のソフトウェア製品の品質/信頼性との関係を,ソフトウェア開発実験として設計レビュー実験を実施した上で品質工学的アプローチを適用し定量化した. (2)プロセス診断方式の開発のために,上記の構成要素から成るプロセスの成熟度が高い,つまりプロセスの能力が高いほど,高品質プロダクトを生産できるという考え方に立脚するW.S.Humphreyのプロセス能力成熟度モデル(CMM ; Capability Maturity Model)と,プロセスの不安定要因に起因するリスクの管理すなわちプロジェクトの失敗を回避するリスクマネジメントを併用したプロセス評価法を提案した. (3)上記(1)および(2)を踏まえて,開発プロセスの上流工程と下流工程の品質/信頼性を関係づけるソフトウェア信頼性評価法と,それに必要なプロジェクトデータ,すなわちプロセス構成要素の属性データと各プロセスのレビュー作業とテストにより検出されるフォールトデータの収集も行った.また同時に,最近のソフトウェア開発形態,例えば分散ソフトウェア開発やオープンソースプロジェクトに基づく開発,等を反映したソフトウェア信頼性評価法も提案した. 以上により,プロセス品質改善の手順を,「プロセス品質定義」→「プロセス診断準備」→「プロセス品質測定とプロセス診断」→「プロセス品質とプロダクト品質/信頼性の評価」→「プロセス品質改善」のステップで進めることが可能となった.
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