本研究はジョブショップを主たる対象とし、種々の不確実な現象が発生しても、その影響を受けにくいスケジュールをいかにして立案するかという問題に取り組んでいる。不確実性の影響を吸収する鍵は、ジョブショップのスケジューリングにおいてしばしば生じる機械の遊休状態であり、不確実な現象の発生の影響をこの遊休状態によって効果的に吸収せることを目指している。 本年度は、処理時間の延びという不確実性に対し、その影響を受けにくいスケジュールを求めることを目指した。すでに従来研究で不安定性という評価尺度を提案している。これは、与えられたスケジュールが1単位時間の処理時間の延びという不確実性の影響をどのくらい受けやすいかを表す尺度である。これを踏まえて本年度は(1)不安定性最小なスケジュールとメイクスパン(スケジュールの長さ)最小スケジュールの関係を実験的に明らかにすることと、(2)不安定性の最小化を効率的に行うための下界値の計算方法、について研究した。その結果、前者の(1)については、(a)不安定性最小なスケジュールの総数が比較的少ないこと、(b)不安定性の値が同じスケジュールでもそれらのメイクスパンにはかなりの幅があること、などが明らかとなった。一方、後者の(2)については、アクティブスケジュールの生成法に基づいて、時間軸に沿って少しずつオペレーションを割り付けていく場合における不安定性の下界値の計算方法を検討し、従来研究で提案していた方法の改良を行った。また、分枝限定法によって不安定性最小化を行う場合の一手順を提案した。
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