本研究ではジョブショップを主たる対象とし、種々の不確実な現象が発生しても、その影響を受けにくいスケジュールをいかにして立案するかという問題に取り組んできた。不確実性の影響を吸収する鍵は、ジョブショップのスケジューリングにおいてしばしば生じる機械の遊休状態であり、不確実な現象の発生の影響をこの遊休状態によって効果的に吸収させることを目指している。 前年度は、処理時間の延びという不確実性に対し、与えられたスケジュールがその影響をどのくらい受けやすいかを計る不安定性という評価尺度を導入し、メイクスパン(スケジュールの長さ)最小なスケジュールの中から不安定性最小なスケジュールを求める厳密解法に重点を置いて研究を行った。その成果を踏まえ、本年度は分割スケジューリングという一見異なる問題への応用を試みた。大規模なスケジューリング問題に対し、これをいくつかの部分問題に分割して解き、競合を適切に解消しつつ重ね合わせていくという方法においては、重ね合わせ時の競合をできるだけ小さくするという目的を部分問題の中に含めることが有益ではないかと考えられる。これは、部分問題から見たとき、競合の発生を一種の不確実性と見なせば、不確実性の影響を受けにくいスケジュールを作ることが求められていると見なすことができよう。本研究ではこのような着想のもと、各部分問題に対しメイクスパン最小なスケジュールの中から不安定性が最小なものを選ぶ方法を提案した。ベンチマーク問題に対し、メイクスパン最小なスケジュールの中から不安定性が最大のものを選んだ場合と比較したところ、よい結果が得られやすことが明らかとなった。また、不安定性最小なスケジュールの中からメイクスパンの小さいものを選ぶ方法も選択肢に含めることができると考えられることより、不安定性最小化手順の効率化も行った。
|