研究概要 |
三陸沖において,小繰り返し地震を用いて,プレート境界における準静的すべりの時空間分布の把握を行った.また,地震の応力降下量についても推定した.これらの研究の主たる成果は以下のとおりである. 1.M4.8±0.1の地震が規則正しく発生している釜石沖の地震クラスターについて,その再来間隔の揺らぎをもたらす原因として,海溝付近で群発地震活動があると準静的すべりの加速が海溝側から陸側に伝播し,それによってM4.8の地震のアスペリティの応力蓄積が加速し,地震発生を早めた可能性が高いことが判明した. 2.2003年10月31日に宮城県・福島県の県境の東方沖で発生したM6.8の地震に際して,この地震の震源域の南東側で大きな余効すべりが発生していたこと,またその領域では地震発生の半月くらい前にも準静的すべりの加速が生じていたことが判明した. 3.スペクトル比法による解析の結果,海溝近くに低応力降下量の地震が多数発生していることが明らかになった. このうち,1と2は,準静的すべりと地震性すべりの相互作用が強い事を示唆しており,準静的すべりをモニターすることにより大地震の予測がある程度実現できる可能性を示している.また,2の地震は,発生の半月前に開かれた地震学会において,研究代表者が「この付近にはM6程度のアスペリティが複数存在している可能性がある」と指摘した場所で発生しており,GPS・小繰り返し地震・過去の履歴を調べることによって,大地震のポテンシャル評価もある程度可能であることを示した結果となっている.3については,津波地震の震源域を縁取るように低周波地震が発生しているとする研究代表者の仮説を裏付けるものであり,今後,このような研究により津波地震の実態に迫れると期待される.
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