研究概要 |
鉛直アレイによる地震観測データを用いた地盤物性の同定など,地震工学では観測データから数理的モデルのパラメータを決めることがよく行われている.その際に,基準となるのは,観測値と理論値の差の2乗和で代表されるような目的関数を最小にすることが多い.一般に,目的関数は,パラメータに関して非線形であり,最小2乗法では,局所解に収束してしまうことがある.近年,大局的な最適化手法としてヒューリスティック探索法と呼ばれている方法があり,理工学のいくつもの分野での適用性が検討されている. この研究では,遺伝的アルゴリズム,焼きなまし法,タブー探索などのヒューリスティック探索法をいくつかの地盤物性の逆問題に適用し,その性能などについて検討した.まず,微動アレイ探査などで行われているレイリー波の位相速度の逆解析に上記3つの方法を適用し,数値実験を行い,3つの方法の特徴を明らかにした.その結果,遺伝的アルゴリズムは,解への収束が最も速く,タブー探索は最も遅いことがわかった.焼きなまし法も比較的収束が速いが,遺伝的アルゴリズムより局所探索の能力に優れており,より正解値に近いモデルを求めることができた.開発した手法をいくつかの地域での観測位相速度データに適用し,地盤のS波速度を推定することができた.つぎに,焼きなまし法を電気探査のデータと微動の水平鉛直スペクトル比の同時逆解析に適用し,簡便に地盤の比抵抗構造と表層地盤のS波速度と比抵抗構造を推定する方法を提案した.数値実験と実データへの適用により,この手法の妥当性を確認することができた.
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