研究概要 |
本年度は,これまでの都市温暖化の傾向と降雨形態の相関の実態を地上気象観測のデータから把握し,実際に降雨形態がどのように変遷してきたかを解明することを目的とした.そのために,気象庁所管の各地の気象台やアメダス観測点での地上気象データを収集した.1976年から2002年の長期にわたるデータを揃え,最近30年近くの都市温暖化の傾向と降雨形態の変遷過程について調査を実施した.対象地域は大阪平野部の都市圏を中心とした近畿地方とした.大阪を対象とした理由は,既往の研究では東京を中心とする首都圏での都市気象・降水現象の解析が多く,大阪圏を対象とした研究例が極めて少なかったためである.日本で2番目の都市圏である大阪では,平野部が首都圏よりもかなり狭く,その周囲には山地が取り囲み,さらに近郊には神戸や京都といった大都市を控えており,首都圏に比較して極めて地域性の大きさが顕著であると考えられる.都市温暖化の問題(いわゆるヒートアイランド現象)は,近年においては夏季における暑熱化が大きく取り上げられており,エネルギー需要の問題とあいまって,大きな環境問題のひとつになっている.アメダスのデータにより,大阪都市圏における夏季の気温の変化傾向を調べた結果,大阪平野部におけるすべての観測点において,日本の平均的な気温上昇率を上回っていることが分かった.特に,豊中・枚方といった大阪の衛星都市部での気温の上昇率が極めて高いことがわかった.同時に,夏季の降水量の変化傾向を調べた結果,大阪・神戸・堺といった古くからの大都市においては顕著な傾向は認められなかったものの,一方,豊中・枚方・箕面といった周辺都市部では1日に1mmの降水という微雨の頻度が増加していることがわかった.また,強雨の傾向を調べたところ,主要な観測点においては増加や減少といった傾向は明瞭ではなかった.成果は国内・国外の学会で発表した.
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