昨年度実施した30年近くに及ぶ長期間の気象データの分析により、大阪平野部の都市圏での降雨は微雨の頻度が増加する傾向にあり、一方集中豪雨といった強雨の頻度には明瞭な傾向はなかったことが示された。本年度は、都市温暖化(ヒートアイランド化)の影響が支配的な条件(晴天日)での降雨形態の変遷過程を引き続き気象データの解析により調べた。その結果、微雨の増減傾向は必ずしも明確ではないことがわかった。一方、都市ヒートアイランド化の強化に伴い日照時間が減少傾向にあることがわかった。すなわち雨が降るには至らなくても雲の発生が多くなっていると考えられる。この解析と同時にメソスケール気象モデルMM5を用いて大阪都市圏を対象領域とした数値シミュレーションを行った。最初に夏季晴天日の局地循環を再現し、モデルで設定可能な様々なパラメータに対する依存性を調べた。再現性を確認した上で、大阪平野部の都市化が現在よりさらに進んだ状態(ここでは建築構造物の高層化が進むものと仮定)をモデルの下端境界条件として与え、局地循環や雲・降雨の出現パターンの違いについて調べた。その結果、都市化が進んだ状態では都市中心部に流入する海風が強まり、同時に風の収束も強まることが分かった。さらに雲量が若干増加することが分かった。一方、計算対象とした期間は降雨がもともとなかった期間であるが、将来状態においても降雨の発生は見られなかった。これには大気の安定度の違いも関連している。特に水蒸気量に対する感度が高いものと考えられる。そのため、水蒸気量の鉛直分布の違いによってどのような形態の降水システムが発達するのかという観点から、より簡単な条件設定のもとでの仮想的な数値実験を行った。以上の研究の成果は国内・国外の学会で発表をした。
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