研究概要 |
我が国の首都圏では経済・社会等の中枢機能が所謂"一極集中"の状況にある。しかし、近年の社会活動においては、大都市圏中心部がその周辺地域との相互作用を有し、ネットワークシステムとして地域が形成されている。このシステムは、主な社会活動の拠点となる中枢都市、それに依存する住宅都市・ニュータウン地域等地域個々に固有の性質をもたらしている。このような個々の性質をもった一まとまりの地域が地震災害により被害を被ると、直接被害、間接被害を含め、被害は甚大にかつ複雑なものとなることが考えられ、地域間の相互作用は防災分野において非常に重要とされる課題である。さらに、地震危険度評価では、上述した事象を考慮し、様々な地域特性を加味した総合的な地震危険度評価が肝要である。 そこで本研究課題においては、東京湾岸域における地震災害を対象に、震災における間接被害を定量的に把握することと,被災地域からその周辺の地域へと波及していく影響を定量的に捉えることを研究目的として、その評価指標に先に提案した「経済活動力」に加えて、「社会活動力」による評価法を提案した。すなわち、東京都区部直下地震(M=7.2),南関東地震(M=7.9)等の被害地震を想定して東京湾岸域の地震被害予測を行い,これを基に震災時活動力評価を行った。この評価結果より,東京湾岸域における活動力低下は兵庫県南部地震時の兵庫県以上に著しく,物的被害では比較的軽微に評価されている地域でも活動力の低下は非常に大きくなっていることを示した。また,企業の経済活動(経済活動力)における影響以上に,人々の就業・消費活動(社会活動)での影響が大きく他地域へと波及してゆくことを示し,これにより東京湾岸域における地震被害想定では,経済支障の間接被害のみでなく,社会活動の間接被害の波及をも検討する必要性があることを示した。
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