研究課題/領域番号 |
15510157
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
任 鳳蓉 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教務職員 (60280989)
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研究分担者 |
田中 博 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (60155158)
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キーワード | ウイルス宿主内進化 / HIV-1 / 経時的な連続サンプル / 逐次リンクアルゴリズム / 正の淘汰進化 / 抗HIV多剤併用療法 / 耐性サイト |
研究概要 |
この研究の初期段階で、我々は「遺伝距離準拠型逐次リンクアルゴリズム」を開発しGenBankから抽出した24個のHIV-1(env遺伝子のV3領域)の連続サンプルに適用した。その成果が昨年度国際誌"GENE"に掲載された。 今年度は国立感染研エイズセンターとの共同研究で、この新しい方法を用いて抗HIV多剤併用両方(HAART)を受けた患者から経時的に採集した541個のHIV-1 pol遺伝子(プロテアーゼと逆転写酵素領域)の連続サンプルについて解析を行い、これらのウイルス準種の経時的な進化系統樹を作成することができた。その系統樹は、各ウイルス準種間の進化関係を明らかにしたと同時にエイズウイルスが投与された抗HIV剤に相関して宿主内で活発的に変異するダイナミックな進化過程をも示した。また、どの時期、どのアミノ酸サイトに正の淘汰進化が働いたのかについての推定によって得られた結果は既知の耐性サイトに準じるものが多数検出された。従ってこの方法はAIDSの予後予測やHAART治療効果の時系列的評価に適用できると考えられる。その成果か平成15年度の日本ウイルス学会と分子生物学会で発表された。 しかし、我々のこれまでの方法は、(1)隣接2時点間の準種の進化関係の推定を基礎としていたが、それ以前の時点の準種との関係まで考慮する必要がある。(2)エスケープ変異種の推定基準について進化距離だけで不十分であることが分かって、今後既知の耐性サイトの情報などを取り入れることを考えている。(3)このようなデータの場合、配列の類似性が高いため、正の淘汰進化の推定精度について再検証する必要がある。来年度は以上の問題点の解決を目指して研究を進める予定である。
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