この研究課題を始める時点において、前職場でin silicoで同定した約2500のセンスーアンチセンス遺伝子対配列情報を有していた。これら遺伝子対はcDNA配列から得られたものであり、実際に細胞内で転写されていると考えられたが、直接の発現は確認されていなかった。これらセンス-アンチセンス遺伝子の実際の発現を確認するため、センス鎖とアンチセンス鎖と区別して発現、定量を可能とするオリゴDNA(60mer)によるマイクロアレイを作成し、2500対の遺伝子のうち約2000対(4000個)の遺伝子に関して主要組織(繊維芽細胞、脳、心臓、精巣)における発現解析を行った。その結果、90%以上の遺伝子がそれぞれの組織において発現し、その発現量、そしてセンス鎖とアンチセンス鎖の発現量の比も組織によって変化しているものがあることが判明した。 前年度における解析結果より、センス-アンチセンス遺伝子座からはノーザンブロット上ではスメアとして検出される様々なサイズのpolyA無しのRNAが転写され、これらは核内に局在する傾向があることが判明したため、組織切片を用いたin situ hybridizationを行い、核内における転写産物の蓄積を再確認した。このような新規のRNAの状態が判明したため、通常の方法でセンス鎖もしくはアンチセンス鎖のみをノックアウト、ノックダウンすることにより遺伝子の機能解析を行うのは難しいということも判明した。 センス-アンチセンス遺伝子座から転写されているRNAにpolyAがついていないものが多いことを受けて、マイクロアレイ解析においてもpolyA無しのRNAをターゲットにして解析を行ったところ、polyAのあるもとは違ったセンス-アンチセンス遺伝子の発現比が得られた。
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