研究概要 |
1.昨年度に樹立したDREFとMi-2を組織特異的にノックダウンできる遺伝子導入ハエに加えて、染色体境界領域の形成や維持に関与することが示唆されている染色体境界領域結合因子(boundary element associated-factor ; BEAF)を組織特異的に発現するためのUAS-BEAF系統ならびに組織特異的にノックダウンするためのUAS-BEAF RNAi系統の遺伝子導入ハエを樹立した。 2.UAS-BEAF系統を用いて複眼でBEAFを強制発現すると軽いrough eye表現型を示したが、UAS-BEAF RNAi系統を用いて複眼原基や翅原基でのBEAFの発現をノックダウンしても複眼や翅の形態形成に異常はなかった。しかしながら、発生の初期に全身でBEAFの発現をノックダウンすると発生は著しく遅れた上に1齢幼虫で致死となった。このことは、BEAFが形態形成時よりむしろ発生の初期に必要であることを意味する。 3.熱ショックによりその転写が一過性に誘導されるhsp70遺伝子領域を1つの染色体機能ドメインのモデルにして、熱ショックの前後にDREF,Mi-2,BEAFの挙動を調べた。形成される染色体機能ドメイン興味深いことに、hsp70遺伝子領域に結合する量は変化しないのに対し、DREFとMi-2はともに、熱ショック後数十分以内にhsp70遺伝子領域にリクルートされることがわかった。今後、熱ショック後のDREFとMi-2の結合量を時間経過を追って詳しく調べる予定である。また、DREFまたはMi-2をノックダウンした培養細胞を用いて、hsp70遺伝子の熱に応答した発現が影響を受けるかどうかについても調べる準備が整った。 4.damID"という方法を用いて濃縮精製した、DREFやMi2がin vivoで結合しているDNA断片(500bp前後)をプローブに用いて、ショウジョウバエcDNA(あるいはゲノム)マイクロアレイを解析し、DREFおよびMi2が結合している領域のプロファイリングを行った。現在、実験をくり返し行うことで、DREFとMi-2の結合しているゲノム領域を特定する作業にとりかかっている
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