研究概要 |
昨年度に引き続き,コンピュータを利用した理論設計で利用する局所構造の関数の精密化をおこなった.昨年度はタンパク質の立体構造データベースを利用して,主鎖二面角について大規模な統計調査を実行し,ラマチャンドランプロットから(φ,ψ)の領域を10程度に分割した.今年度は分割した領域についてアミノ酸配列とそれがのる構造との適合具合を評価する関数を実際に作成し,その出来を評価した.関数を作成する場合,Sipplが提案した変喚式がよく利用されるが,ここではそれには従わず,ベイズ統計で利用される式を採用した(Sipplの形式とは構造と配列の統計を利用する箇所が異なっている).実際に分割した領域についてアミノ酸別にスコア表を作成し,それを利用して天然タンパク質の立体構造を擬似的に作成した構造群(デコイ)から天然の立体構造が選択できるかを調べた.その結果,二面角を天然構造から変化させて作成したデコイ(4state_reduced)についてはほんとどの場合において天然構造の選択に成功した.他のデコイセットではあまり良い成績は得られなかったが,それはアミノ酸間相互作用関数など本来利用すべき関数をまだ組み込んでいないからだと思われる.4state_reducedで良い結果が得られたことから本研究で作成した関数は局所構造の天然構造らしさを反映したものであると考えられる.今後は隣り合った部位同士の相関などをふくめて関数を精密化することで,より高い精度が得られるかを検証する.
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