研究概要 |
RanGAP1は、核内低分子量Gタンパク質Ranの加水分解促進因子である。細胞内ではユビキチン様タンパク質SUMOにより翻訳後修飾を受けることで、核膜孔タンパク質RanBP2と相互作用している。この相互作用によるRanGAP1の局在情報の形成と消去は、RanGTPaseを介する核-細胞質輸送の効率と方向性を制御する上で重要と考えられている。しかしながら、その空間情報の管理システムの分子基盤は十分明らかでない。 本年度の研究より、以下の点が明らかになった。 1)in vitroのSUMO化システムを確立し、RanBP2の自己SUMO化活性による高頻度のSUMO化が、RanGAP1との相互作用を不安定化することを見いだした。RanGAP1が核膜孔の局在情報を消去する新しいメカニズムと考えている。 2)SUMO修飾酵素群E1およびE2を、SUMOおよびその基質タンパク質と一緒に大腸菌体内で大量に発現させる系を確立した。この系で、SUMO化したリコンビナントRanGAP1,RanBP2,P53,PMLを大量に合成できるようになった。RanGAP1は細胞内ではSUMO-1化を効率よく受けているが、SUMO-2化は起きないことが知られている。現在、RanGAP1における、SUMO-1修飾とSUMO-2修飾の生理的な機能の違いを、大腸菌システムで発現したSUMO化RanGAP1を用いることで、未修飾RanGAP1との生化学的あるいは構造学的な違いを解析している。 3)SUMO-2に相互作用する因子を、マウス7日胚由来のcDNAライブラリーより、酵母2ハイブリッド法を用いて検索した。約20個の因子が同定された。そのうち、未報告のものが約半数あり、発生初期におけるSUMO修飾の機能を探る上で、重要な遺伝子産物と考えている。
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