研究課題/領域番号 |
15510165
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
入江 厚 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 助手 (30250343)
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研究分担者 |
西村 泰治 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 教授 (10156119)
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キーワード | 質量分析 / T細胞活性化 / リン酸化タンパク質 / PKCμ / PKD2 / プロテオーム / 二次元電気泳動 |
研究概要 |
T細胞の抗原認識は、従来厳密に制御されていると考えられていた。しかし、ヒトCD4陽性T細胞クローンを用いた実験から、その特異的な抗原ペプチドのアミノ酸残基の一部を他に置換したアナログペプチドに対しても、抗原提示細胞上に過剰に発現させることにより、T細胞の強い増殖応答ならびに各種サイトカイン産生を誘導することを我々は見い出した。この現象は、T細胞は、寛容であるアナログペプチドに対しても過剰に暴露されることによりその活性化が誘導されうることを示すものであり、その分子機構の解明は好ましくないT細胞応答の予防・治療法の開発につながるものと考えられる。興味深いことに、このT細胞応答には、ZAP-70と呼ばれるタンパク質リン酸化酵素の活性化を伴わず、またその下流に存在する各種基質分子のリン酸化も認められなかった。本研究では、T細胞を特異抗原ペプチド、あるいはそのアナログペプチドにより刺激し、それぞれよりリン酸化タンパク質のみを調製し二次元電気泳動を行った。次いで、それぞれのタンパク質スポットを、質量分析法により同定し、両者の間でその量に変異のあるものを特定した。その結果、特異抗原ペプチドの刺激と比較してアナログペプチドの刺激では、リン酸化RhoGDIβやerbB3結合タンパク質EBP1などが減少し、逆にリン酸化NAC (nascent-polypeptide-associated complex)やLSP1 (lymphocyte specific protein)などは増加していた。今後、アナログペプチド刺激によるT細胞活性化機構におけるこれらの分子の機能を解析するため、それらの変異体の過剰発現や特異的RNA干渉法による発現抑制などを試みる。いっぽう、近年T細胞の成熟や抗原応答にPKCμ (protein kinase Cμ)が重要な働きをすることが認知されつつあるが、我々は本研究による質量分析の結果から、T細胞にはPKCμは存在せずこれと相同性の高いPKD2 (protein kinase D2)であることを明らかにした。またPKD2の基質と思われる分子をT細胞の核内より数種同定し、現在その機能の解析を行っている。
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