研究概要 |
ポストゲノム時代を迎え、迅速な遺伝子機能解明のための技術開発が求められている。本研究では、非分裂細胞に効率よく遺伝子導入できるレンチウイルスベクターの特徴を利用し、より広範囲で迅速な遺伝子機能解析手段の開発を目的として、以下のようなベクターの改良および応用法の開発を行い、実際に遺伝子の機能解析も行った。 1.Tet発現調節プロモーターを用いて、遺伝子発現のOn, Offの調節が可能なレンチウイルスベクターを作製した。 2.初代培養細胞や幹細胞などから不死化細胞株を容易に樹立するため、SV40 T antigenまたはTERT遺伝子を組み込んだレンチウイルスベクターを作製した。 3.レンチウイルスベクターによる遺伝子発現抑制の系を確立するため、siRNA(small interfering RNA)を発現することのできるレンチウイルスベクターを作製した。このベクターを用いて、GFP遺伝子をターゲットとした遺伝子発現の抑制効果を検討した結果、遺伝子発現抑制の系がうまく働くことがわかった。 4.安全性を高めた第3世代レンチウイルスベクターが、種々のヒト白血病細胞株、造血幹細胞、白血病患者あるいはメラノーマ患者の細胞に効率よく遺伝子を導入できることを示した。 5.静止期CD4^+T細胞、静止期CP8^+T細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージなど、これまでレトロウイルスベクターで遺伝子導入が困難であった細胞に、レンチウイルスベクターを用いることにより、効率よく遺伝子を導入し発現させることができることを示した。さらに、レンチウイルスベクターを用いてCD4^+ナイーブT細胞におけるCD226(DNAM-1)遺伝子の機能解析を行った。また、Bcl-3遺伝子をマクロファージに導入し強制発現させることたより、LPSによるTNF- α産生の誘導が阻害されることがわかった。
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