研究概要 |
ポストゲノム時代を迎え、迅速な遺伝子機能解明のための技術開発が求められている。本研究では、非分裂細胞に効率よく遺伝子導入できるレンチウイルスベクターの特徴を利用し、より広範囲で迅速な遺伝子機能解析手段の開発を目的として、以下のようなベクターの改良および応用法の開発を行った。また、共同研究により実際に遺伝子の機能解析も行った。 1.昨年度作製したsiRNA(small interfering RNA)発現レンチウイルスベクターを改良し、siRNAの発現効率を高めた。また、Tet発現調節機構を利用して、siRNA発現のOn,Offの調節が可能なベクターを作製した。 2.Cre遺伝子発現レンチウイルスベクターを作製し、Cre-loxシステムによる遺伝子発現のOn,Offの調節が可能な系を確立した。 3.siRNA発現レンチウイルスベクターによる遺伝子発現抑制の系を用いることにより、PPARγ遺伝子の発現抑制によって脂肪細胞への分化が抑制されること、変異型BRAF遺伝子の発現抑制によりメラノーマ細胞株の増殖を抑制できること、Skp-2遺伝子の発現抑制により小細胞肺癌細胞株の増殖を抑制できること、HIV-1を標的としたsiRNAの発現によりHIV-1感染細胞におけるHIV-1遺伝子発現の抑制が可能であることを示した。 4.レンチウイルスベクターを用いて、T細胞に抗腫瘍抗原(CBA)抗体のキメラ遺伝子を導入することによりCEA+腫瘍に対する抗腫瘍効果がみられた。また、gp34/OX40L遺伝子をDCに導入し強制発現させることにより、同種CD4+T細胞に対する反応性が上昇することを示した。 5.cDNAライブラリー発現レンチウイルスベクターを構築し、発現クローニングにより、HIV-1感染によるCD4+T細胞の細胞死を阻害する遺伝子としてCD14を単離した。
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