研究概要 |
ポストゲノム時代を迎え、迅速な遺伝子機能解明のための技術開発が求められている。本研究では、非分裂細胞に効率よく遺伝子導入できるレンチウイルスベクターの特徴を利用し、より広範囲で迅速な遺伝子機能解析手段の開発を目的として、以下のようなベクターの改良および応用法の開発を行った。また、共同研究により実際に遺伝子の機能解析も行った。 1.安全性と発現効率を高めた第3世代レンチウイルスベクターを作製し、造血幹細胞、静止期CD4^+またはCD8^+T細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージ、種々のヒト白血病細胞株、白血病患者あるいはメラノーマ患者の細胞など、これまでレトロウイルスベクターによる遺伝子導入が困難であった細胞に効率よく遺伝子を導入し発現させることができることを示した。また、CD4^+ナイーブT細胞へのCD226(DNAM-1)遺伝子の導入、マクロファージへのBcl-3遺伝子の導入、T細胞への抗腫瘍抗原(CEA)抗体キメラ遺伝子の導入、樹状細胞へのgp34/OX40L遺伝子の導入により、個々の遺伝子の機能解析を行った。 2.Cre遺伝子あるいはTet発現調節プロモーターをレンチウイルスベクターに挿入することにより、遺伝子発現のOn, Offの調節が可能な系を確立した。 3.遺伝子発現抑制のため、siRNA(small interfering RNA)発現レンチウイルスベクターを作製した。このベクターを用いて、PPARγ遺伝子、変異型BRAF遺伝子、Skp-2遺伝子等の発現抑制により個々の遺伝子の機能解析を行った。また、Tet発現調節機構を利用して、siRNA発現のOn, Offの調節が可能なベクターも作製した。 4.発現クローニングのため、cDNAライブラリー発現レンチウイルスベクターを構築し、HIV-1感染によるCD4^+T細胞の細胞死を阻害する遺伝子としてCD14を単離した。
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