研究概要 |
本研究では,in vitroでセレクションされた機能性RNAをin vivoで利用可能な分子とすることを目指し,新規なヌクレオシドトリリン酸体を合成し,in vitro selection法による機能性人工RNA創製のための基礎研究を行う.すでに4'-thioUTPおよび4'-thioCTPの合成を完了し,予備実験において両トリリン酸体がT7 RNAポリメラーゼの基質となることを明らかにしている.本年度はその結果をふまえさらに詳細にin vitro selection法への応用のための基礎的研究を行った.その結果,4'-thioUTPおよび4'-thioCTPは天然型UTPおよびCTPと比較して約90%の効率でRNA鎖に取り込まれる事が分かった.その効率は,従来in vitro selection法に用いられている2'-アミノ体(約50%)や2'-フルオロ体(約10%)と比較して極めて高い効率であった.さらに得られた修飾RNAは逆転写酵素によってcDNAへと変換でき,シークエンシングの結果,その配列に誤りがない事が確認できた.これにより4'-thioUTPおよび4'-thioCTPはin vitro selection法に適応可能であることが示された.またヌクレアーゼに対する抵抗性についてもRNase Aを用いて調べた結果,修飾RNAは天然型RNAと比較して50倍安定であることが明らかになった. 以上の結果を受け,現在ヒトトロンビンに対するin vitro selection法による修飾RNAアプタマーの獲得実験を行っている.30merのランダム配列を有するテンプレートDNAを用いた場合でも4'-thioUTPおよび4'-thioCTP存在下での転写反応は効率よく進行し,増幅・セレクション・逆転写のラウンドを計9回行った.各ラウンドのRNAプールのヒトトロンビンに対する結合活性を調べた結果,ラウンド9後ではプール全体の50%以上のRNAがヒトトロンビンに対して結合することが確認できた.今後,得られるRNAアプタマーのシークエンシング,2次構造予測を行うとともに,4'-thioATPおよび4'-thioGTPの合成ならびにin vitro selection法への適応を検討する.
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