研究概要 |
本研究では,in vitroでセレクションされた機能性RNAをin vivoで利用可能な分子とすることを目指し,新規なヌクレオシドトリリン酸体を合成し,in vitro selection法による機能性人工RNA創製のための基礎研究を行う.すでに4'-thioUTPおよび4'-thioCTPがT7 RNAポリメラーゼのよい基質となることを明らかにしており,本年度はその結果をふまえ,ヒトトロンビンに対するin vitro selection法による4'-thioRNAアプタマーの獲得実験を行った.30merのランダム配列を有するテンプレートDNAを用い,増幅・4'-thioUTPおよび4'-thioCTPを用いた転写・セレクション・逆転写のラウンドを計10回行ったところ,3種の配列に収束した(class1,2と3).それぞれの配列を持つRNAのトロンビンに対する結合親和性を調べたことろ,class1およびclass2の配列はトロンビンに対して選択的に結合する配列であることが分かった.一方,class3の配列はニトロセルロース膜にも結合することが明かとなった.そこでclass1とclass2の配列についてのみ,2次構造予測を行った.その結果,いずれもステム-バルジ-ループ構造を持ったclass-1-23とclass-2-37が得られた.そこでそれらを化学的に合成し,ヒトトロンビンに対する結合親和性を調べたところ,class-2-37はK_d=4.7nMと極めて高い親和性を示した.これまでに報告されているヒトトロンビンに対するRNAアプタマー(RNA-24)も合成し,その活性を比較したところ,class-2-37は約20倍高い結合親和性を有することが明かとなった(K_d=4.7nM vs. K_d=85nM).以上の結果より,申請者は4'-thioUTPおよび4'-thioCTPがin vitro selection法に利用可能であり,ヌクレアーゼに対して抵抗性を示し,かつ高い結合親和性を有するアプタマーが獲得できることを実証できた.
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