研究課題
「海産生物(刺胞動物)由来の高分子タンパク質毒素の科学」という未開拓の研究領域を展開するために研究を行っている。クラゲやイソギンチャクに代表される海産刺胞動物の多くが強力な刺毒を有している。しかし、これまで長い間これら刺毒の多くが非常に不安定なタンパク性の毒素であることが障害となって、その化学的性状の解明はほとんどなされていなかった。そのような状況のもと、我々は立方クラゲや猛毒で知られるイソギンチャク類の不安定な高分子タンパク質毒素を単離し、その性状を解明してきた。今までの研究を踏まえ、本年度我々は、沖縄に生息する猛毒で知られるウンバチイソギンチャク(Phyllodiscus semoni)の未解明であった主要毒素の一つPsTX-60Bについてその全塩基配列ならびに全アミノ酸一次配列を明らかにすることができた。本毒素は、もう一つの主要毒素PsTX-60A同様にmembrane-attack complex/perforin (MACPF)ドメインを持っていることが判明した。また、日本に生息するもっとも危険な刺胞動物とされるハブクラゲ(Chiropsalmus quadrigatus)が複数のタンパク質毒素を持っことを明らかにした。現在、これらタンパク質毒素について構造解析中である。沖縄産のアナサンゴモドキ(Millepora sp.)が有するきわめて不安定なタンパク質毒素の単離にも成功した。本タンパク質毒素は強い溶血活性を示す分子量約100kDaの酸性タンパク質であった。刺胞動物からこのような高分子量のタンパク質毒素が活性を保持した状態で単離されたのは本研究が初めてである。
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