研究概要 |
アカクラゲ(Chrysaora melanaster)のは日本各地の沿岸でよく見られる普遍種である。本種は強毒種として分類されている。アカクラゲのもつ溶血活性タンパク質を陽イオン交換クロマトグラフィーとゲルろ過クロマトグラフィーを用いてほぼ単離することができた。その結果,溶血活性を示す化合物は分子量約28,000の塩基性タンパク質であることが示された。また、ザリガニに対する致死活性を指標に硫安沈殿,陰イオン交換HPLC,ゲルろ過HPLCを用いて毒素の単離を行った。その結果,単離された致死毒性物質は,分子量約100,000の酸性タンパク質であることが判明した。また,本化合物のザリガニに対する致死活性のLD_<100>値は2μg/kgであった。刺胞動物から分子量10万もの大きなタンパク質毒素が活性を保持したまま単離されたのは,今回が初めての例である。 ミズクラゲ(Aurelia aurita)は日本沿岸における普遍種であり,無毒もしくは極めて弱毒のクラゲとして一般的に認知されている。しかし,予備試験の結果ミズクラゲの触手抽出物は,猛毒で知られるハブクラゲの触手抽出物と比べて1/4という強い致死毒性をザリガニに対して示した。そこで,ミズクラゲが持つ毒素の性状解明を試みた。各種クロマトグラフィーを用いた精製の結果,ミズクラゲは溶血活性,細胞毒性,致死活性とそれぞれ異なる作用を示す最低3種類の活性物質を有していることが示された。また,致死活性を指標にして,硫安沈殿,陰イオン交換HPLC,ゲルろ過HPLCを用いて毒素の精製を行った。現在のところ毒素の単離にまで至っていないが,分子量43,000の酸性タンパク質が致死活性物質本体であることが示された。
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