研究課題
基盤研究(C)
平成15年度から17年度にかけて、我々は主に沖縄に生息する有害海洋生物(特に刺胞動物)のタンパク質毒素の化学的性状を中心に研究を行った。その結果、沖縄でもっとも刺傷被害例が多く報告されているハブクラゲは複数の作用メカニズムが異なるタンパク質毒素を持つことが明らかにされた。そのうちの一つは顕著な溶血活性を示すが細胞毒性はほとんど示さない、一つは溶血活性・細胞毒性ともに示す、もう一つは溶血活性をほとんど示さないが顕著な細胞毒性を示した。このように、最低でも3種類のタンパク質毒素を刺胞内に含有することがあきらかにされた。このことから、ハブクラゲによる刺症は複合的な症状である可能性を示すことができた。また、激しい刺症被害を起こすことで知られるフサウンバチイソギンチャクから分子量約60kDaのタンパク質毒素を単離し、その全アミノ酸一次配列ならびに全塩基配列を決定した。その結果、従来体内の免疫系で働いていると考えられていたMACPFタンパク質が体外で毒素として働く初めての例であることを見出した。ダイバーなどに刺傷被害を引き起こすため,fire coralと呼ばれるアナサンゴモドキ(Millepora sp.)から、溶血活性を有するタンパク質毒素を単離することに成功した。本毒素は、分子量約100kDaの酸性タンパク質であった。刺胞動物から分子量100kDaもの高分子タンパク質毒素が活性を保持したまま単離されたのは本研究が初めての例である。
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