研究概要 |
細胞系生物発光(1)及び遺伝子クローニングと発現(2)に分けて研究実績概要を述べる。 1.対数増殖期のVibrio fischeri strain Y1細胞分画をショ糖密度勾配遠心法に基づき達成した.分画細胞の成長過程の解析から,時間の経過とともに初期の青緑色発光が黄色発光へと変遷することを実証した.さらに,分画V.fischeri Y1細胞の蛍光顕微鏡測定,生物発光測定及び分画細胞より抽出したタンパク質のイムノブロッティングから次のことが明らかとなった: i)核様体を複数個もつ細胞は青緑色光と黄色光のバイモード光を放射する; ii)核様体の個数が減少するにつれて黄色光が支配的となる;及びiii)光の色の変化は細胞内ルシフェラーゼと黄色蛍光タンパク質(YFP)の相対量に依存して細胞膜近傍で起こる.一連の実験結果に基づくと,V.fischeri Y1に固有な発光変調は,細胞分裂周期とリンクした現象として捉えることができる. 2.V.fischeri Y1細胞よりゲノムDNAを抽出し,YFP及び青色蛍光タンパク質(Y1-BFP)の発現あるいはクローニングに供した.塩基配列が既知のYFPに関しては,PCR法により増幅したYFP遺伝子を発現ベクターに組込み,これを大腸菌に入れ形質転換した.さらにこのプラスミドDNAを発現用大腸菌に入れて大量培養し,YFPの発現と単離の方法論を確立した.未知Y1-BFP遺伝子の場合,Y1-BFP遺伝子領域をPCR法によって増幅後,ベクターに組込み大腸菌を形質転換,そのプラスミドDNAのシーケンスの一連の操作を繰り返して行い,Y1-BFP遺伝子のクローニングを達成した. 今後,生物発光変調を細胞分裂周期の観点から捉え,単一細胞レベルにおけるルシフェラーゼ及び蛍光タンパク質遺伝子の発現の規則性を調べるともに発光挙動の細胞内時空解析を行う.
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