研究概要 |
近年我々は、Fe-Sクラスター(Fe-S蛋白質のコファクター)の形成に必須な、二種の独立した大腸菌マシナリー(ISCとSUF)を明らかにした。次なる課題は構造と機能、反応機構の解明である。マシナリーの個々の成分がどのような役割を演じているのか?また、複数の成分がどのように調和してマシナリーとしての機能を発揮するのか?二種類の合成系の存在意義と合わせて、分子レベルで詳しく理解する必要がある。本年度は、下記の研究を推進した。 1.大腸菌のISC並びにSUF、好熱菌Aquifex aeolicusのISC、好熱性古細菌Sulfolobus tokodaiiのSUFマシナリーの構成成分について、各々単独、または複合体として発現させ、大腸菌変異株の相補実験と並行して、精製と機能解析を進めた。新たに、SufB+SufC+SufD複合体が、サブユニットの入れ替えを含むダイナミックな構造変換を行うことを見出した。またSufDについては、構造情報(下記)に基づいて種々の変異を導入し、機能的に重要な部位を同定した。加えて、AquifexのIscUが意外にもFe-Sクラスター中間体を結合した状態で精製できることを見出し、さらに変異を導入することによって中間体の安定化を達成した。 2.上記精製タンパク質(複合体)の結晶化を試み、昨年度の大腸菌YfhJ (IscX)に続いて、本年度はSufA,SufC,SufDそれぞれの構造決定に成功した。SufA二量体の結晶構造では4残基のシステインが近接する機能部位の実体、SufCではATPase活性と構造変換を共役させ得るドメイン間の塩橋、SufDでは新規なβ-helix二量体という、構造上の特性を次々に明らかにすることができた。一方、SulfolobusのSufC+SufD複合体についても良質の結晶を得ることができた。
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