研究概要 |
1.PKNの活性化をPKNの立体構造変化をもとにモニターするプローブNCOP(PKNコンフォメーションプローブ)の構築を行い、PKNの細胞内活性化メカニズムの解析を目指して以下のアプローチを行った。 (1)以前の我々の研究から、PKNのアミノ末端側領域は、カルボキシル末端側の触媒領域の活性を、通常抑制しており、PKNの活性化刺激はこの抑制を解除するというモデルが考えられたため、アミノ末端にCFP、そしてカルボキシル末端にYFPが融合したPKN1の全長の動物細胞発現ベクターを作成した。この際、融合部分に種々のリンカー配列をいれたものや、また、CFPの位置をさまざまに変えたもの、CFP、YFPを入れ替えたものなどを用意した。 (2)(1)で作成したベクターをHEK293T細胞などに発現、精製し、kinase activityが、失われていないことを確認した。また、PKN1とRhoAおよびRhoBとの結合の性質が保存されていることも確認した。 (3)(1)で作成したさまざまなPKN1の構築を、HEK293細胞やCOS7細胞などに発現させ、蛍光分光光度計により蛍光波長をスキャンして、CFP/YFPによるFRETがみとめられることを確認した。またこのFRET値の高い構築を「NCOP」と命名した。また、NCOPのFRET値が、PKN1のin vitroにおける活性化剤として知られるアラキドン酸などの不飽和脂肪酸や低濃度の界面活性剤などの存在下で、濃度依存的に低下することを見出した。このことは、NCOPが、PKN1のコンフォメーション変化による活性化のモニターとして使用できる可能性を示唆するものである。 (4)NCOPをHEK293、HeLa、NIH 3T3、MDCKなどの細胞に導入して、NCOPの局在を確認したところ、内因性のPKN1の局在と同様細胞質に比較的びまん性に存在していた。しかし、活性型もしくは野生型のRhoBと共発現することにより、核近傍膜構造や、形質膜への移行がみとめられた。そこで、これらのRhoBとの共発現時に、NCOPのFRET値が変化するかどうかを、大阪大学微生物学研究所の松田研究室において検討させていただいたが、有意な変化は認められなかった。このことから、RhoBとの結合のみでは、PKN1のコンフォメーションに活性化の変化を与えるのには十分ではない可能性も示唆された。 最近、当ラボにも本科研費によってFRET観察可能な顕微鏡が納入されたので、今後繰り返し、さまざまな刺激による細胞内NCOPのFRET値の変化を追いかけてゆきたい。 2.PKNの活性化を基質のりん酸化をもとにモニターするプローブNKAR(PKN activation reporter, NKAR)の作成をめざして、PKNの特異的リン酸化配列の同定を目指して以下のアプローチを行った。 (1)12merのランダムペプチドを発現するphage display libraryを、PKN存在下でリン酸化させ、リン酸化スレオニンに結合するFHA2ドメインをリガンドとするカラムにかけて、結合したもの濃縮し同定した。このアプローチにより、ある傾向をもつペプチド配列の情報が集まりだしたところである。今後、至適なペプチド配列が得られれば、それをもとに、NKARの構築を行っていく予定である。
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