Dr.Newtonらによって作製されたCKAR(C kinase activity reporter)を用いて、まずセルフリーのリン酸化アッセイを行ったところ、CKARがPKCのみならず、PKNによっても十分リン酸化を受けることがわかった。そこで、PKNに特異的に反応するプローブを作るべく、まずPKNの特異的基質モチーフの決定をめざして、以下の二つのアプローチを推し進めた。i)12merのランダムペプチドをファージ表面に発現するファージディスプレイライブラリーを作製し、精製PKNによってリン酸化し、リン酸化トレオニンに結合するFHA2ドメインをリガンドとするカラムにかけて、結合したファージを濃縮するというステップを繰り返し、FHA2に結合するリン酸化基質モチーフの決定を行った。同様の方法でチロシンフォスファターゼの特異的基質モチーフの決定に成功されたDr.Walchliとも議論を重ねつつ実験を行ってきたが、いくつかのコンセンサスらしい配列を見出したものの、その配列をもとに作製したペプチドで、いまだPKN特異的リン酸化を認めるにいたっていない。ii)ビオチンタグをつけたコンビナトリアルペプチドライブラリーを用いて、in vitroで精製PKNによるリン酸化反応を行い、特異的リン酸化モチーフの解析をおこなったところ、PKCと非常によく似たモチーフが得られた。しかし、そのわずかな違いをもとに種々の合成ペプチドをデザインし、実際のin vitroでのリン酸化レベルを検討することにより、PKCでは非常に効率よくリン酸化されPKNではほとんどまったくリン酸化されないペプチドモチーフを決定することに成功した。しかしながら、現在までのところ、PKNのみでリン酸化されるモチーフの決定には至っていない。今後解析を重ね、粗精製フラクションでのリン酸化アッセイを可能にする特異的ペプチドのモチーフを決定し、継続してNKARの作製をトライする予定である。
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