研究概要 |
イトマキヒトデの胚発生を初期原腸胚の段階で選択的に停止させる活性及びヒストン2量体の生成を阻害する活性を指標として、放線菌の培養液から生理活性物質を探索した結果、Micromonospora属の放線菌のブタノール抽出物中からMicromonospolide Aに加えて新規なマクロライド化合物を単離し、Thiomonospolideと命名した。さらに大量培養した培養液から多量のThiomonospolideを抽出単離した。Thiomonospolideは、一次元及び二次元NMRスペクトルデータ等から、バフィロマイシン型の16員環ラクトン構造及びInositol、Glucosamine、N-Acetylcysteineから構成される新規マクロライドであると構造決定した。絶対配置は,改良Mosher法、Marfey法及び^<13>C化学シフトの比較等によって決定した。Thiomonospolideは、イトマキヒトデの胚発生を初期原腸胚の段階で停止させる活性を示したが、Micromonospolide Aと比較すると阻害活性は弱かった。これは、Thiomonospolideの構成成分として糖類が含まれていることによって細胞膜への透過性が低下したためと考えられた。さらに、Thiomonospolideは、V-ATPaseを強く阻害することがわかった。その阻害活性は、Micromonospolide A及びBafilomycin Aよりも強かった。また、海綿Geodia exiguaから単離・構造決定された新規スピロ型セスキテルペンExiguamideは、ウニの胚発生過程で、16細胞期に生じるmicromereの形成を阻害し、その結果不完全な骨片をもつ幼生が生じることがわかった。ホルムアミド構造をもつExiguamideの各種類縁体を合成してそれらの阻害活性を調べた結果、類縁体には阻害活性がみられなかった。
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