アミノ酸は生命の維持機能を担う重要な化合物である。アミノ酸を取り巻く研究分野は幅広く、ゲノム科学、タンパク質工学、ペプチド科学、非天然型アミノ酸の合成と利用など、様々な角度と視点から精力的な取り組みが為されている。とりわけ、非天然型アミノ酸を分子プローブに利用するアプローチは、精密な分子構造情報を与える手法として注目されている。本研究では、アミノ酸のカルボキシル基を平面型カルボン酸等価体であるスクアリン酸へと置換した、新規アミノ酸類縁体の創製と機能解析を行った。 H16年度の研究課題として、(1)天然型アミノ酸各種に対応するα-アミノスクアリン酸(ASQ)類の合成並びに(2)生理活性ペプチド(エンケファリン)への組み込みを掲げた。(1)においては、スクアリン酸含有アミノマロン酸誘導体を利用する新たなASQの合成ルートを確立した、先に開発したジアニオンエノラートとの相補的活用によって、供給可能なASQ類のバリエーションを広げることができた。(2)では、エンケフェリンアナログの合成を試みた。試行錯誤の末、新規アミノ酸誘導体をN末端、或いはペプチド鎖中に導入可能なことを初めて示し、これをもとに、4種の新規エンケファリンアナログの合成に成功した。新規アナログのオピオイドレセプター結合活性を調べたところ、弱いながら結合活性が認められた。ASQ含有ペプチドの合成と特性を明らかにした、初の研究成果である。
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