研究概要 |
本研究課題において、以下の3つのことを達成した。1)DNA光切断分子の創製:アントラセンをDNAインターカレーター及びDNA光切断部位として、デオキシアミノ糖をDNAグルーブバインダーとして有する人工ハイブリッド分子を分子設計、化学合成し、これが、365nmの光照射下、DNAをグアニン選択的に切断することを見出した。さらに、ガン細胞に対する抗細胞活性を評価した結果、光照射選択的な抗細胞活性を示すことを確認した。2)バルジDNA識別分子の創製:バルジ塩基にそれぞれ相補的なDNA塩基とデオキシアミノ糖を縮合させた核酸塩基-糖ハイブリット型人工分子を分子設計、化学合成し、シトシンとアミノ糖を連結したハイブリッド型人工分子が、G-バルジDNAに対して、DNAの融解温度(T_m)の上昇を引き起こすことを見出した。さらに、完全相補的DNA、A-バルジDNA、C-バルジDNA及びT-バルジDNAに対しては、T_mの上昇が観察されないことから、本ハイブリッド分子が、G-バルジDNAを特異的に識別し、安定化する人工分子であることを確認した。3)テロメラーゼ阻害剤の開発:テロメラーゼによるテロメア伸長反応の過程で見られる、DNAのG-カルテット構造に着目し、G-カルテット構造に相互作用することが知られている臭化エチジウムのテロメラーゼ阻害における構造活性相関を検討した。その結果、臭化エチジウムのフェナントリジン環のN-5位の四級化及び3,8位のアミノ基の存在がテロメラーゼ阻害活性の発現に必要不可欠であることを明らかにした。また、N-5位はエチル基よりメチル基が、また、カウンターアニオンにはヨウ素塩より臭素塩の場合の方が、より強いテロメラーゼ阻害活性を示すことを見出し、臭化エチジウムをモチーフとしたテロメラーゼ阻害活性のより強い新たな化合物を探索するうえでの新たな指針を示した。
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