研究概要 |
ニーマン-ピック病C型(NP-C)症はリソソームの酵素スフィンゴミエリナーゼの欠損により脳、脾、肝、腎などにスフィンゴミエリンが異常に蓄積する劣性遺伝形式(ヒト染色体18番のNPC1遺伝子の欠損)をとる重篤な先天性代謝異常症である。本症疾患者はそのほとんどが乳児、小児であり、生後6ヶ月ですでに肝、脾腫の腫大、精神運動発達の遅延、痙攣が認められ、痩せて悪液質となり4才までにその多くが死亡するといわれ、早期発見による発症予防と対症療法がきわめて重要視され、早期確定診断法の確立が強く望まれている。本研究ではNP-Cの特異的疾患マーカーとして新規胆汁酸抱合体の異常代謝産物をとりあげ、1)予想推定化合物の化学合成による構造決定、及び2)HPLC、LC/MSによる高感度・高選択的な信頼度の高い直接測定法を開発し、本症の早期発見、確定診断の基盤を構築することを目的とする。合成ターゲットであり、本症疾患マーカーとして期待される具体的候補化合物としては、3β,7β-ジヒドロキシ-5-コレン酸を母核とし、ステロイド核上のC-3位ヒドロキシル基に硫酸、C-7位ヒドロキシル基にN-アセチルグリコサミン、側鎖末端のC-24位カルボキシル基にアミノ酸(グリシンあるいはタウリン)が結合した三重抱合体であると推測されている。その合成には以下に記した立体選択的・特異的合成手法、選択的保護基の導入と除去、並びにそれに伴う至適カップリング剤の選択がポイントとなった。 (1)3β,7β-ジヒドロキシ-5-コレン酸を胆汁酸原料から数段階の工程を経て合成した。次いで、このちののC-3、-7位ヒドロキシル基に対する選択的保護基の導入と脱保護化にっいて至適誘導体化剤を吟味した。 (2)上記(1)で合成した非抱合体化標品について、C-24位側鎖末端カルボキシル基にグリシンあるいはタリンを適当なカップリング剤を用いて結合し、アミド型に誘導した。 (3)上記(2)で得たアミド抱合体のG3位ヒドロキシ基にスルホン酸基を導入してタウロ(グリコ)胆汁酸3-スルフェート二重抱合体を得た。 (4)上記(3)の二重抱合体のC-7位ヒドロキシル基にさらにα-アセトハロアミノ糖誘導体をKornig-Knorr反応等を用いてカップリングし、最終目的物である三重抱合型のタウロ(グリコ)-3β,7β-ジヒドロキシ-5一コレン酸3-スルフェート7-N-アセチルグルコサミンの三重抱合体の合成に成功した。 平成16年度は、上記合成標品を用いての至適分離・分析条件を確立し、本症の早期確立診断法の確立に資する予定である。
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