研究概要 |
ニーマン・ピック病C1型(NP-C1)は、リソソームの酵素スフィンゴミエリナーゼの欠損により、脳、膵臓、肝臓、腎臓などにスフィンゴミエリンが異常蓄積する劣性遺伝形式(ヒト18番目のNPC1遺伝子の欠損)をとる先天性代謝異常症である。2001年、Alveliusらは肝障害を発症したNP-C1患者尿中に健常人の尿中には全く存在しない新規胆汁酸多重抱合体がきわめて有意な量で排出されることを明らかにした。この胆汁酸多重抱合体の確定構造は未だなされていないものの、3β,7β-ジヒドロキシ-5-コレン酸を母核とし3位に硫酸、7位に淋アセチルグルコサミン(または、オキソ基)、側鎖24位にグリシン(あるいはタウリン)を共有結合で抱合した三重抱合体である可能性が最も有力であると推測されている。 本研究では、これら胆汁酸多重抱合体がNP-C1疾患の特異的診断マーカーとなり得るものと期待し、標品合成を行った。合成標品はエレクトロスプレーイオン化(ESI)-質量スペクトル(MS)およびESI-MS/MSによるスペクトルパターンをAlveliusらによる報告のそれと比較・検討を行ったところ極めてよく一致した。 現在、合成標品とNP-C1疾患者の実尿検体を用い、高感度・高選択的なLC/MS測定法を開発中である。
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