研究課題
基盤研究(C)
本研究では心筋における特殊な細胞接着複合体である介在板の形成機構の研究を培養細胞系を用いて行なった.初めに、介在板の形成を可能とするラット心筋細胞の培養系の確立を試みた.その結果、精製した心筋細胞を用いて繊維芽細胞の過剰増殖を抑制して心筋細胞をコラーゲンでコートした基質に並ばせ、ウマ血清とb-TGFを含む培地で長時間培養することにより、培養系において介在板様の構造体を再現性良く心筋細胞の長軸端に局在させることが可能となった.この局在化過程は心臓の発達に伴う介在板の形成過程と非常に良く似た変化であり、今回開発した培養系は生理的な介在板形成のモデルとして十分使用できることを示している.次に、この系を用いて血清の効果を検討したところ、血清は細胞を接着させ細胞の生存を助ける活性及び細胞を並べる活性のあることが認められた.これらの活性はウマ血清が一番有効であった.さらに、各種成長因子の検討を行なったところ、TGF-βには拍動を増強する活性が、b-FGFには細胞を並べる活性が、IGFにはアクチン繊維形成促進の活性のあることが判明した.介在板の形成には心筋細胞の分化を必要とするが、心筋細胞の分化だけでは起こらず、心筋細胞の形態や並び方も必ずしも必須ではなかった.また、介在板の形成部位は細胞内のアクチン繊維の極性と深く関わっていることが明らかとなった.一方、もう一つの細胞骨格である微小管も介在板の形成に関与していることが示唆されたが、微小管はおそらくアクチン繊維の走行を決定し、間接的に介在板の形成に関与しているものと考えられる.今後は形成機構を制御しているメカニズムの解明をすることが重要である.
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