研究概要 |
比較ゲノム学的手法を用いて、数種のナス科植物からステロイド配糖化酵素をコードする候補遺伝子断片を単離し、キンギンナスビ由来の3種の遺伝子(SaGT4A,SaGT4R,SaGT6)に絞り込んだ。これらの遺伝子を大腸菌で発現させ、精製タンパクを用いて糖転移活性を検討したところ、SaGT4Aについてのみ、アキュレアチサイドA,Bのサポゲニンであるヌアチゲニンを含むステロイドサポゲニンを基質として、UDP-グルコースを転移させる活性を有することがわかった。次に、SaGT4A遺伝子を毛状根用遺伝子抑制ベクターに導入し、このベクターでキンギンナスを形質転換した。その結果、遺伝子発現が抑制された毛状根クローンを作出することができた。 一方、抗アキュレアチサイド抗体を用いて、アキュレアチサイドの迅速な免疫化学的検出法について検討した。これまでに配糖体の吸着にはPDVF膜が適していることが実証されていたが、本膜の入手が困難になったため種々の膜について検討した。その結果、アキュレアチサイドの吸着に、ポリエーテルスルホン膜が適していることがわかった。本膜を用いてアキュレアチサイドA,Bの検出条件を検討した結果、アキュレアチサイドA,Bともに、約2μgで検出可能であることがわかった。さらに、上記で作出した毛状根クローンのアキュレアチサイド含量を測定した結果、コントロールの毛状根に比べ、SaGT4A遺伝子発現抑制クローンでは、約1/5に低下していることがわかった。以上のように大腸菌で発現させたタンパクを用いたステロイドサポゲニンの糖転移反応実験、ならびに、形質転換毛状根を用いた機能発現実験により、SaGT4A遺伝子が、植物体においてステロイドサポニンの生合成に関わる遺伝子であることがわかり、本研究目標である、根培養系を用いた免疫化学的手法による代謝関連遺伝子の機能解析を達成することができた。
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